基準値内だから大丈夫?数値だけじゃない個体内変動の見方

健診結果を見る際に必ず目にする基準値ですが、基準値内に収まっていれば大丈夫だと安心していませんか?確かに基準値は健康な人のほとんどがこの基準値に内に収まるという数値に間違いありません。しかし経年変化を確認する際にはもう一歩踏み込んだ数値の見方をする必要があります。
今回は正しい健診結果の活用方法をご紹介いたします。


実は健康な人でも基準値から外れる人もいる

健康診断の基準値は多くの健康な方のデータの平均値をとったものです。
健康な人の大半、95%が入る検査値の範囲を「基準値」としています。
そのため健康な人でも5%くらいの人は基準値から外れることがあります。
また検査数値は食事や運動、その日の体調によっても影響が出るため基準値から外れたからといってすぐに病気とは限りません。

基準値よりも数値の変化に注意が必要

あまり聞きなれない言葉ですが「個体内変動」という考え方があります。
例えば、肝機能AST、ALTは基準値が10~50です。
AさんはAST、ALTは例年ほぼ20前後の値を示していました。基準値内低値で問題ありません。
一方BさんですがAST、ALTの値はちょっと高めの40とはいえ、基準値内に収まっていて問題なしとした経過でした。
ところがある年の検査ではAさん、Bさんともに30という値になっていました。
基準値の中央値でまったく問題なし!
そう思われるかもしれません。それはそれで正しいです。

ではここでAさんに問診してみます。

「郊外に家を購入し通勤に時間がかかるようになりました。」
「会社では役職がついてさらに帰宅が遅くなり、夕食を食べて疲れ果ててすぐ寝ます。」
「運動する時間がまったくなくなりました。」
「飲み会も増えてメンタルなストレスを感じ始めています。」という返事が得られました。


一方のBさんはAST、ALT以外に体重と腹囲が減少しています。

ではBさんにも問診してみます。

「先生がいつも未病(病気にはなっていないが健康ではない状態)とおっしゃるので一念発起」
「街では階段を使うように心がけるようになりました。」
「通勤では一駅手前で降りて約15分歩いています。」
「食事も野菜を先に食べるようにしています。」
「お酒も控えました。1~2単位(飲酒ガイドライン推奨)にしています。」


ふたりともAST、ALT30という値ですが、20から30になったAさんと40から30になったBさん。いずれも基準値内の中央値を示していますが、その裏には生活のいろいろな動きが潜んでいます。
このように30という数値だけを見るのではなく、前回と比較してどう変化しているのかといった個体内変動を診ることが健康診断では重要です。
個体内変動を診ることでご自身の身体の状態や健康の変化などに気付くことができます。

基準値内だから大丈夫と安心していた方は今一度、前回の数値と比較して個体内変動に注目してみましょう。
そのためにも健診結果が届いたらすぐに捨てるのではなくきちんと保管しておくことをおすすめします。