2017秋号「Lox-index®ってどんな検査?」

日本人にとって、脳梗塞や心筋梗塞はがんと同じくらい馴染み深く、そして怖い病気です。それらを早い段階で食い止めるための新しい検査が、大阪西クリニックや心斎橋クリニックでの施設における健診だけでなく、検診車が皆様のお近くまで伺う巡回健診でもお気軽に受診していただけるLOX-index®(以下、LOX-index)です。
この検査について、今回も医療法人厚生会理事長・厚生会クリニック院長の木戸口公一先生にお話しを伺いました。


ー本日はよろしくお願いします。近年、血管年齢という言葉をよく聞きます。

そうですね。血管の健康、血液が順調に流れることの大切さに、多くの人が気づきはじめているのかもしれません。しかし、胃や肝臓などの臓器に気を使うことはあっても、血管のために生活を改める人はまだ少ないのではないでしょうか。


ー血管の健康の重要性は、どんなところにあるのでしょうか。

ひとつクイズを出しましょう。「10万キロメートル、10万回」この数字が何を指すかわかりますか?これは、人間の血管の長さ(総延長)と、1日に打つ心拍数なのです。これだけでも、血管のはたらきのすごさがわかると思います。


ーとてもない数字ですね…。

10万キロメートルの血管のすみずみに血液を行き渡らせるため、心臓は頑張って10万回も動いているのですね。脳から足先まで全身に、酸素やヘモグロビン、栄養素を運ぶのが血管の役割です。しかし、就寝するとき、食事をするとき、運動するときなど、状況に応じて適切に血液を流さなければなりません。
まさにロジスティクス(物流)で、どこかでトラブルが起きれば、さまざまな悪影響がからだに出てきます。(図1)

ー中でも、危険な病気は何になるのでしょうか。

やはり、心疾患と脳血管疾患ですね。心疾患は心筋梗塞や狭心症など、脳血管疾患は脳梗塞や脳出血などです。
日本人の死亡数(表1)を見ると、1位は圧倒的にがん(悪性新生物)なのです。心疾患は2位、脳血管疾患は4位になっていますが、両者を合計するとがんに迫るくらいの人数です。しかも、脳梗塞等は仮に命を落とさなかったとしても、障害が残って著しく生活の質を下げてしまう危険性もあります。

ー死亡数だけでは判断できない部分があるのですね。

私が医師になってすぐの頃は、脳血管疾患の中でも「脳出血」が非常に多かったですね。その時代はまだ日本人の栄養状態がそれほど良くなくて、脂質をあまりとらず、塩分を多くとっていました。そのせいで血管がもろく破れやすかったのです。結果、死に至るケースが割と多かった。
近年はそういった原因での脳出血は減っていますが、今度は「脳梗塞」が主流になりました。豊富な食生活や運動不足などが重なって、動脈硬化(図2)が進行し、血管が詰まりやすくなっているのです。
このように、血管の変化には日本人のライフスタイルの変遷があらわれているといえるでしょう。

ー血管の状態を調べるためには、どんな検査が有効なのでしょうか。

いろいろな手段がありますが、画像診断ということでは頚動脈エコーが挙げられます。頚動脈は脳につながっている動脈で、ここに超音波を当てると血管の中が見えるのですね。血管の壁の厚さやプラークの有無等が確認できるので、現時点でどれだけ動脈硬化が進んでいるかという診断に効果的です。

また、もうひとつ効果的な検査があって、それはCAVI(キャビ)というものです。かんたんに説明すると、手首と足首に血圧計を4つ巻いて、心臓から血液を送り出すときの「脈波」を測定するのです。どういうふうに末梢に伝わっていくか、その波形と伝わるまでの時間差を見ることで、血管がどの程度硬くなってきているか、詰まり始めているか等が分かります。


ーでは、最近導入したLOX-indexはどのような検査なのでしょうか。

LOX-indexは超音波や血圧計などを必要とせず、採血だけで診断可能な検査です。血液の中の超悪玉コレステロール「LAB」(*)と、その担い手である「sLOX-1」(**)という成分を測定し解析することで、動脈硬化の進行と将来の脳梗塞・心筋梗塞のリスクがわかります。


ー他の検査と比べて、優れている点はなんですか。

一番の特徴は、現在の血管がおかれている過酷な環境を知り、将来の疾患リスクが予測できるということです。検査の結果LOX-index値が高いと診断された方は、脳梗塞の発症率が約3倍、心筋梗塞が約2倍であったというデータもあります。(図3)

健康を川の流れに例えると、生活習慣の乱れは上流で密かにそしてささやかに起きていることなので、時間が経過して下流すなわち将来に至ったときにどうなるかということは、その時点ではわかりにくい。だんだん中流に到って高血圧川や高血糖川になる、つまり下流に行くに従って川に流れが乱れて堤防も壊れはじめ、結果的に脳や心臓の疾患にかかり、川が決壊するわけです。
その川の状態を少しでも早期に、予防的に判定するために先ほどの頚動脈エコー等を実施するのですが、これとてすでに中流の病態になってしまっている。しかし、LOX-indexであれば上流の段階で「今は大丈夫でも、これからどんどん悪くなっていく」という川の将来すなわち中流から下流の様子が推測されるのです。
もちろんこれだけですべてが診断できるわけではないので、複数の検査を組み合わせる必要はありますが、病気になる前の対策が可能になるということでかなり有効な検査だといえるでしょう。


ーどんな人が受けるべきでしょうか。

基本的には、血縁のご家族に脳梗塞・心筋梗塞にかかった人がいる人や、血圧・LDLコレステロール・血糖値が高めで動脈硬化が気になる人が受けるべきです。また、40歳以上の人、喫煙や肥満など生活習慣のリスク因子を持っている人も受けたほうがよいでしょう。
ただ、私個人的には20代~30代の比較的若い人も一度受けることをおすすめします。たとえその時点では動脈硬化の心配があまりなかったとしても、自分の血管の状態がどの方向に向かっているか知っておくことは、とても大事だと思いますから。これこそ一次予防(未病医療)に不可欠な検査といってよいでしょう。


ー結果報告書(図4)もとても見やすいですね。

そうですね。リスク別に色分けされてグラフで表示されるので、自分がどの位置にいるかひと目でわかります。このグラフで赤にいる人は、すでに何らかの疾患が出てきている可能性が高いですが、オレンジのところにいる人は自覚症状がなくても将来のリスクが高い状態であることが多いです。このような人を発見できるのがすばらしいですね。
また、過去の検査結果からの推移もわかるので、良くなっているか悪くなっているかを判断しやすいです。

ー最後に、皆様へメッセージをお願いします。

血管の病気は進行すると非常に怖く、急に発症して命を落としたり、健康的な生活を送れなくなってしまう可能性があります。まだ改善が可能なうちに対策するために、LOX-indexをぜひ受診してください。検査は採血だけですので、巡回健診でもぜひ受けてほしいですね。